コラム~離婚を決断してから準備するべきこと5つ~

「離婚したいけれど、具体的に何をすればいいのかわからない」そのようなお悩みをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
離婚の手続きを円滑に進めるため、また、離婚後の生活をより良いものにするためには事前の準備が大切です。
今回は、離婚を決断してから準備すべき以下の5つについて、順番に解説していきます。

1.離婚後の生活の準備・シミュレーション

2.離婚手続きの確認・シミュレーション

3.離婚原因の確認・証拠集め

4.離婚へ向けた、配偶者との話し合い

5.離婚前の別居

離婚後の生活の準備・シミュレーション

離婚をご決断された際は、まず離婚後の生活をシミュレーションしてみてください。
例えば、「離婚後の生活費はどうなるか」、お子様がいらっしゃる場合「離婚後の子育てをどうするか」などです。
シミュレーションの結果離婚後の生活に不安があれば、それを解消する方法を考えます。例えば、行政の支援制度を調べる、転職・再就職の準備をする、身内その他頼れる人を探すなどです。

参考コラム:離婚までに準備しておくといいこと-離婚後の生活を安心して始めるために必要な準備を解説

離婚手続きの確認・シミュレーション

離婚の手続きには次の2種類があります。
・夫婦お互いの合意により成立する離婚(協議離婚)
・裁判上の離婚
協議離婚の場合、夫婦の双方が離婚に合意していれば、役所に離婚届を提出・受理されることで離婚は成立します。離婚届の詳細については、法務省のホームページまたはお住いの地域の役所でご確認ください。

参考:法務省│離婚届

一方、夫婦間で合意に至ることが難しい場合は、裁判所へ離婚調停(裁判所が間に入って行う話し合い)の申し立てをすることも選択肢に挙がってきます。
離婚を切り出す前にはまず、「配偶者は離婚に応じてくれそうか」「配偶者はこちらの希望する条件を呑んでくれそうか」を一度シミュレーションしてみてください。

離婚原因の確認・証拠集め

配偶者が離婚に応じてくれそうにない場合や、離婚の条件(親権、養育費、慰謝料など)でもめてしまいそうな場合には、配偶者に法的離婚理由があることをあらかじめはっきりさせた上で話し合いに臨むことをお勧めします。
法的離婚理由とは、簡単に言うと法律で決められた「離婚を認めるべき」事情です。具体的には以下の5つがあります。

①配偶者が不貞行為(肉体関係を伴う不倫・浮気)をした

②配偶者による悪意の遺棄があった

③配偶者の生死が3年以上わからない

④配偶者が重い精神病にかかり回復の見込みがない

⑤その他、婚姻を継続しがたい重大な事由がある

①~⑤のどれかに該当する事実がある場合、夫婦での話し合いや調停に備え、その証拠集めをしておく必要があります。後々証拠にできそうなものはできる限り手元に残し、法的離婚理由に該当する配偶者の行動は記録するようにしましょう。

参考コラム:離婚までに準備しておくといいこと-離婚後の生活を安心して始めるために必要な準備を解説

離婚へ向けた、配偶者との話し合い

協議離婚をする際は離婚届を提出する前に、離婚のさまざまな条件について夫婦で話し合い決める必要があります。
特に、未成年の子どもがいる夫婦の場合、離婚後の親権者を誰にするかが決まっていなければ離婚届は受理されません。
また、財産分与(離婚に際して夫婦の共有財産を分けること)、慰謝料、子どもの養育費などお金にかかわることも、離婚後の生活のため大切なことですので、離婚届を提出する前に夫婦で話し合いクリアにしておかれることをお勧めします。

また、離婚後のトラブル防止のため、夫婦で話し合った結果は文書(離婚協議書)で記録しておきましょう。
離婚協議書は公正証書(公証役場で公証人が作成する証書)での作成をお勧めします。離婚後、「配偶者が養育費を支払ってくれない」などの金銭支払いに関するトラブルが起こった場合、公正証書による離婚協議書があれば直ちに強制執行ができスムーズな解決を図れます。
公正証書の作成は、専門家である司法書士に相談・依頼することが可能です。

離婚前の別居

配偶者からDV・モラハラの被害を受けている、結婚生活による精神的苦痛から少しでも早く逃れたい、夫婦でお互いに距離を置き離婚の話し合いを冷静に進めたいなどのご事情がある場合には、離婚前の段階から別居することも選択肢の一つです。

離婚前に別居するメリット

別居には、前述のように、DV・モラハラの被害や結婚生活のストレスから速やかに逃れられる、夫婦で距離を置くことによって離婚の話し合いを冷静に進められるというメリットがあります。
また、別居が長期間に及んだ場合、その事実が夫婦関係の破綻を示す根拠となり、結果的に法的離婚事由(その他、婚姻を継続しがたい重大な事由)が認められる可能性もあります。具体的にどの程度の期間別居すれば離婚が認められるのかはその他の事情によりケースバイケースです。

離婚前に別居するリスク

後述しますが、別居して生活空間を別にすることにより、配偶者の法的離婚理由(浮気、不倫、DV、モラハラなど)の証拠集めや財産分与に必要な資料集めが困難になります。これらの証拠・資料集めは別居前に行うようにしてください。

また、法律上、夫婦には原則として同居の義務があります。そこで、正当性が認められないような理由またはやり方で別居を強行すると、それが法的離婚理由の一つ「悪意の遺棄」に該当してしまう場合があります。そうなると、離婚の際ご自身が配偶者から慰謝料を請求されるリスクが出てきます。

別居中の生活費はどうなる?

原則として、婚姻費用(生活費、医療費、子どもの養育費、教育費など結婚生活を維持するために必要なお金)は夫婦が共同で負担することになっています。それは夫婦が別居した場合でも同様です。
夫婦のどちらがどのくらいの金額を負担するべきかは事情によりケースバイケースですが、基本的に、夫婦間で収入の差がある場合には、収入の高い方が低い方へ婚姻費用を支払うことになります。

参考コラム:離婚準備中の別居時の生活費はどちらが負担する?

別居をスタートするには?

まずは別居後の生活に備える必要があります。具体的には以下のようなことです。
・別居後に住む場所の確保
・別居後の生活費のシミュレーション
・相手から受け取れる婚姻費用のシミュレーション
・子どもがいる場合、転校など学校との兼ね合い
・引っ越しの手配・スケジュール

また、「別居について配偶者と話し合うべきか」「配偶者に別居後の住所や連絡先を教えるべきか」についても考えなければいけません。
別居を「悪意の遺棄」と捉えられないため、また、離婚へ向けた話し合いに必要なため、「別居の意思」と「別居後の連絡先」は配偶者にあらかじめ伝えるのが一般的です。
ただし、配偶者からDVを受けているような場合は別です。居場所を知られることで更なる危害を受けるリスクがあるため、配偶者へ別居後の連絡先は教えないようにしましょう。また、そのような場合はいざというときに備え、専門の相談窓口とコンタクトを取っておくことをお勧めします。

参考:男女共同参画局│相談機関一覧

別居前に財産分与の準備をしておきましょう

実務上、財産分与の基準時は「別居の時点」と考えられています。
また、一度別居してしまうと、配偶者が立ち入りを拒否した場合など、自宅へ戻りたくても戻ることができなくなる可能性があります。そうなると、夫婦の財産について調査する機会が失われてしまい、財産分与の際不利になるリスクがあります。
そこで、離婚を前提とする別居をされる際は、離婚時の財産分与に備え、あらかじめ以下の準備をしておきましょう。
・自分名義の財産について、通帳、印鑑、カード、家の権利書などの資料を持ち出す。
・配偶者名義の財産(預貯金、保険、不動産、株式、将来受け取る予定の退職金、貴金属などの高価な動産)についてどのようなものがあるか把握する。
・配偶者名義の財産に関する資料(取引先の銀行名・支店名、保険証券の現物写真・証券番号の記録、不動産の固定資産税通知書・ローンの支払い計画書、高価な動産の写真など)を集め、持ち出しておく。

配偶者に法的離婚理由がある場合、別居前に証拠を集めておきましょう

先ほども述べましたが、一度別居してしまうと、その後は自宅へ戻りたくても戻ることができなくなる可能性があります。
離婚の話し合いや離婚調停で配偶者の法的離婚理由について主張する可能性がある場合には、別居前にその事実を客観的に示す証拠を集め、持ち出しておきましょう。
別居の際持ち出しておくべき証拠としては、例えば以下のようなものがあります。
・配偶者の不貞行為を理由に離婚する場合:不倫相手と肉体関係があったことをうかがわせるメール・SNSなどのやりとりの記録、通話の記録、不倫相手と肉体関係があったことを示す写真・動画、ホテルのレシートなど
・配偶者による悪意の遺棄を理由に離婚する場合:夫婦間でのLINE・通話などの記録、生活費が入金される通帳、配偶者が家に帰って来ない場合は配偶者が出て行った日時と帰宅した日時の記録など
・配偶者のDVやモラハラ、子どもへの虐待を理由に離婚する場合:医師による診断書(怪我や精神症状などで治療を受けた場合)、動画または録音による配偶者の発言・行動の記録など

まとめ

以上、離婚を決断してから準備するべきこと5つについて解説してきました。
これらを、時間を掛け慎重に行うべきか、急いで行うべきか、とにかくすぐに別居に踏み切るべきか、その判断はケースごとにさまざまかと思います。
お悩みの方は、その点も含め、まずは専門家や各種相談窓口などへご相談されることをお勧めします。

 

 

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