コラム~空き家の所有者が亡くなったら?遺産分割協議の注意点と方法~
空き家の所有者が亡くなったら?遺産分割協議の注意点と方法
空き家を所有している家族が亡くなった場合、誰がその空き家を引き継ぐことになるのでしょうか。
相続人が1人であればその人が遺産を引き継ぎますが、複数いる場合には、相続人の中で誰が空き家を引き継ぐかを決める必要があります。
もし、遺産分割協議がまとまらず、空き家を放置することになった場合、税制面での優遇が受けられなくなったり、相続人が増えて遺産分割がより困難になるおそれがあります。
相続財産の中に空き家があった場合には、遺産分割協議を行い、速やかに空き家の所有者を決めましょう。
この記事では、空き家の所有者が亡くなった場合における、遺産分割協議の注意点をわかりやすく解説していきます。
空き家を引き継ぐのは誰?
空き家も相続財産に含まれるので、法定相続人が引き継ぐのが原則です。ただし、相続人が複数いて、法定相続分通りの分配では納得できない場合には、相続人間で話し合い(遺産分割協議)を行い、誰がどの遺産を引き継ぐのかを決定する必要があります。
相続すると管理費用や固定資産税などの税金がかかったり、家の解体にもお金がかかることから、亡くなった方が所有していた不動産が放置されるケースも多いです。
遺言がない限り、その空き家は相続人が引き継がなければなりませんが、管理や税金などの関係から誰も空き家を相続したくないと考える場合や、所在地の関係で売却も難しいような場合には、遺産分割協議がまとまらない場合があります。
もし、どうしても話し合いでの遺産分割ができないのであれば、裁判所の調停委員を間に挟んで話し合う遺産分割調停や、裁判所に誰が相続すべきかを判断してもらう遺産分割審判で、問題の解決を図ることになるでしょう。
なお、遺産分割審判の場合、相続人間で空き家を共有相続することになるか、もしくは、空き家を競売などで売却し、その売却代金を相続人間で分割することになります。
また、基本的に審判が確定するまでは、その空き家は法定相続分に応じて各相続人が共有します。
空き家の相続における注意点
空き家を相続する際に気をつけなければいけない点は、おもに次の3つです。
● 空き家の管理責任は相続人全員が負う
● 相続放棄しても管理責任が残る可能性
● 相続登記を怠ると過料が科される可能性も
空き家を相続して大きな負担を背負わないためにも、これから説明する注意点はしっかり頭に入れておくようにしましょう。
空き家の管理責任は相続人全員が負う
空き家を誰が相続するか決まるまでは、基本的に相続人全員が共有している状態になります。そのため、空き家の管理責任も相続人全員が負うことになります。
空き家の管理とは、たとえば、建物の修繕、不法占有者の排除、賃貸物件における賃料の取り立て、固定資産税の支払いなどが、おもな管理にあたります。
相続人は、その固有財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産を管理しなければならず(民法918条1項)、空き家の管理に不備があり、近隣住民や通行人などに損害を与えた場合には、損害賠償請求をされるおそれがあります。
たとえば、空き家の塀が老朽化し壊れかけているにもかかわらず、修繕せずに放置した結果、その塀が崩れて通行人にけがを負わせた場合などは、空き家の管理責任を問われます。また、空き家の庭の草木を放置した結果、隣人宅に被害が生じた場合などでも、その損害を賠償させられる可能性があるでしょう。
この管理責任は、空き家を相続するのが誰か決まるまでは、相続人全員で負います。しかし、いざ損害賠償を請求されると、相続人の中で誰が責任をとるべきなのかで揉める可能性があります。
一度揉めると、相続人間で感情的な溝が深くなり、遺産分割協議をまとめるのが困難になります。そうならないためにも、なるべく早めに遺産分割協議をまとめ、空き家の所有者を明確にしておくことが重要です。
相続放棄しても保存義務が残る可能性
相続放棄は、全ての遺産を放棄する手続きです。そのため、相続放棄すれば空き家の管理義務もなくなるのが原則です。
ただし、空き家を「現に占有」している場合には、相続放棄しても、一定期間保存義務を負う場合があります。
管理義務の発生条件 | 相続放棄のときに、空き家を「現に占有」しているとき |
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管理義務が発生する期間 | ほかの相続人または相続財産清算人に対して空き家を引き渡すまでの間 |
保存・管理方法 | 自己の財産におけるのと同一の注意義務をもって保存・管理する必要あり |
たとえば、亡くなった父が所有していた持ち家が相続財産になるケースで、母や父の両親がすでに他界している場合を想定します。このケースで、子どもが相続放棄をした場合、空き家の相続権は父の兄弟姉妹に移りますが、子どもが父の持ち家の管理に関わっていた場合には、空き家を引き渡すまでは管理責任を負うことになります。
空き家を相続放棄したからといって放置していると、思わぬところで管理責任を問われる可能性があるので、注意してください。
なお、「現に占有」がどういった状態を指すのかについては具体的な事情によって異なるので、不安であれば司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
相続登記を怠ると過料が科される可能性も
不動産を相続したら相続登記を行う必要がありますが、この相続登記は2024年4月1日から義務化されたため、空き家を相続したら速やかに法務局に申請を行う必要があります。
相続登記とは、空き家の名義を相続人名義に変更する手続きのことです。
相続登記を放置していると、空き家の所有者が誰かわからず、その空き家を安全に取引できなくなります。たとえば、実際の所有者と登記簿上の所有者が異なる場合には、 空き家を売却したり、担保にして融資を受けることもできません。また、新たに相続が発生した場合には、権利関係が複雑になり、相続登記が困難になるおそれもあります。
相続登記の申請期限は、「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、相続により不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内」です。正当な理由なくこの申請期限を過ぎた場合、10万円以下の過料が科せられる可能性があるので、注意が必要です。
なお、相続登記の義務化は、全ての未登記不動産に適用されます。つまり、2024年4月1日以前に発生した相続で、未登記の空き家がある場合には、一定の期限内に登記を行う必要があることになります。
遺産分割協議がまとまらないと税金の負担も増す
遺産分割協議がまとまらず、空き家の所有者がいつまで経っても決まらない場合、各種特例や控除が使えず、税金の負担が増す可能性があります。
たとえば、相続税における「小規模宅地等の特例」や「配偶者控除」の適用を受けるためには、基本的に、相続税の申告期限(被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内)までに、遺産分割が成立している必要があります。
もし、期限までに遺産分割協議がまとまらず、空き家の所有者が決まっていない場合には、一旦、特例や控除の適用がない状態で高額な相続税を支払うことになってしまいます。
遺産分割協議がまとまっていないからといって相続税の申告を怠ると、加算税や延滞税などのペナルティを受けるので、遺産分割協議を早めにまとめる意義は大きいといえます。
空き家を有効活用できないなら空き家を手放す手続きを
空き家を相続したら、まずはその空き家を有効活用できないかを検討してみましょう。
空き家に建物としての資産価値があるのであれば、そのまま住むだけでなく、売却したり、賃貸物件として貸し出すこともできるでしょう。
また、空き家に資産価値がない場合には、リフォームして居住用として利用したり、建物を解体し、土地を更地にして売却することも考えられます。
もし、管理費用や解体費用をかけたくない場合や、どうしても有効活用できそうにないのであれば、相続放棄や相続土地国庫帰属制度を活用して、空き家を手放すことを検討しましょう。
相続放棄
相続放棄をすれば、一定期間、空き家の保存義務を負う可能性があるものの、空き家を完全に手放すことができます。
相続放棄は、借金などのマイナスの財産を含む遺産の全てを放棄する手続きです。家庭裁判所に申述が認められれば、空き家の所有者になることを防げます。
申述期限は、「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内」です。期限内に必要書類を収集し、「被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所」に対して申述を行います。
相続放棄の手続きは、相続人自身で行うことも可能ですが、必要書類の収集に時間がかかり、申請期限を過ぎてしまう可能性があります。
そもそも、相続放棄すべきかどうかの判断も含めて、空き家を相続したら専門家である司法書士に相談することをおすすめします。
相続土地国庫帰属制度
相続土地国庫帰属制度を利用すれば、相続した不要な土地を、国に引き取ってもらうことができます。
相続土地国庫帰属制度を利用するためには、一定の要件を満たす必要があります。たとえば、以下のようなケースの場合、相続した土地を引き取ってもらえない可能性が高いです。
・建物が建っている土地
・土壌汚染が確認できる土地
・抵当権などの担保権が設定されている土地
・第三者が通る通路として使用されている土地
・境界が明らかになっていないなど、権利関係に争いがある土地 など
つまり、空き家がある場合に相続土地国庫帰属制度を利用するためには、空き家を取り壊して更地にする必要があるということになります。
また、相続土地国庫帰属制度を利用して国に土地を引き取ってもらう場合、土地の管理費用10年分を支払う必要があることも、頭に入れておきましょう。
まとめ
空き家の所有者が亡くなったら、遺産分割協議で誰がその空き家を相続するかを決める必要があります。
遺産分割協議をせずに空き家を放置していると、相続税における「小規模宅地等の特例」や「配偶者控除」を利用できなくなったり、近隣住民とのトラブルに発展する可能性もあります。
また、空き家の所有者が決まらないうちに新たな相続が発生すると、相続人が増えて、相続人全員での合意形成が難しくなります。
空き家を有効活用できそうにないのであれば、相続放棄で手放すことを検討しましょう。
相続税の申告期限や相続放棄の申述期限もあるので、空き家の相続で迷ったら、なるべく早めに、専門家である司法書士に相談することをおすすめします。
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